前橋城 / 徳川家康に「関東の華」と言わしめた関東七名城のひとつ

かつて徳川家康に「関東の華」と言わしめた関東七名城のひとつ、前橋城です。

前橋藩：15万石

歴史

■室町時代から戦国時代

室町時代中期（15世紀末）に箕輪城を本拠地とする長野氏の支城として築かれた石倉城がお城の起源とされています（諸説あり）。

1534年の利根川氾濫に際し、本丸、二の丸が崩壊したことで残った三の丸を中心に長野賢忠がお城を再築。
「厩橋城（まやばしじょう）」と呼ばれるようになります。

1551年には上野国に侵攻した後北条氏の支配下となりますが、1560年に越後の長尾景虎（後の上杉謙信）により攻め取られ、越後の北条高広が城代として入城したため以後は上杉謙信の関東進出の拠点として位置付けられます。

しかし、1582年になると織田信長が東へ勢力を広げる中で家臣の滝川一益が上野国を支配するようになり、高広は滝川軍に厩橋城を引き渡します。

同年、本能寺の変で織田信長が明智光秀に討たれると織田軍は動揺。
機を見て神流川の戦いで滝川軍を破った北条氏直は厩橋城を獲得します。

以後、小田原征伐で北条氏が滅亡するまで厩橋城は小田原城の勢力圏に組み込まれます。

■徳川氏支配から江戸時代

1590年の小田原征伐後、関東に入封した徳川家康は家臣の平岩親吉に3万3000石を与えて厩橋城に入城させます。

1600年の関ヶ原の戦いが終わると親吉は甲府藩に移され、代わって酒井重忠が3万3000石で入城します。
酒井氏は徳川譜代の名門であり、4代藩主・忠清は江戸幕府の大老に就任しています。

忠清から5代藩主・忠挙の時代（1649年）に厩橋城は大改修を受け、地名を「厩橋」から「前橋」に変えたことで「前橋城」となります。（前橋藩）

大老輩出の名城・前橋城ですが、利根川の浸食によるお城への被害に長く悩まされ、その都度財政を悪化させます。

1749年、酒井氏は播磨国姫路藩へ移封となり、入れ替わりで姫路藩より越前松平家の松平朝矩が15万石で入城します。

1767年、前橋藩主・朝矩は利根川の浸食と財政難でお城の修築が困難なことから、藩の飛び地であった武蔵国川越城に居城を移転することを決めます。
以降、1世紀近く崩壊した前橋城跡に陣屋を建てて川越藩の飛び地として領国支配がなされます。

1863年、利根川の改修が進んで浸食の危険が低下したこと、領民による藩主帰城の願いが強まったこと、特産の生糸輸出により財政が改善したことから川越藩主・松平直克は幕府に前橋城再建の許可を得て1867年にお城と前橋藩の再興を果たしました。

■幕末から現代

お城と前橋藩の再興からわずか半年後、大政奉還により江戸幕府は終焉を迎えます。
1871年の廃藩置県により前橋藩は群馬県となり、お城の建物の多くは取り壊され残った本丸御殿は群馬県庁として利用されることになりました。

1928年に本丸御殿は老朽化で解体され、1999年には城跡に高さ153mの群馬県庁舎が建てられるなど、近年まで都市開発が進んだ結果、現在はわずかな土塁や石垣を残すのみのお城となっています。

お城

かつて徳川家康に「関東の華」と言わしめた関東七名城の一つです。

酒井氏治世時代の城域は15万坪に及び、西に利根川の断崖を背とし、南東に伸びる土塁と壕を巡らせた関東有数の巨城でした。
本丸は城の西側に位置し、ここに三層の天守閣がありました。

現在は都市の開発が進み、お城を窺わせる遺構は土塁や堀、一部の石垣のみとなります。
石垣は大手町二丁目の街中に「前橋城車橋門跡」として残されています。

建造物としては、市内総社町に冠木御門が移築されており、また最後の前橋藩主・松平直方の邸宅が市内の大興寺内に移築され現存しています。

旅の想い

前橋駅から徒歩20分ほど、バスの場合は県庁前のバス停を下車するとすぐに前橋城跡に到着します。
高層の群馬県庁舎を目指せば迷わず済みますね！

名城の跡はほとんど残されていませんが、すぐ近くに利根川が流れ、綺麗に整った街の雰囲気から当時の繁栄を想像することができます。

近代的な県庁舎ビルが今でも前橋城の土塁に敷地をぐるりと囲まれている姿は、なんだか昔と今の融合・共存を感じさせる光景！

前橋藩の石高推移

1601年～1749年：酒井家 3万3000石～15万石（譜代）
1749年～1767年：越前松平家 15万石（親藩）
1767年～1867年：川越藩領時代
1867年～1871年：越前松平家 17万石（親藩）

お城ギャラリー

■前橋城(厩橋城)本丸跡

■前橋城車橋門跡